ブリーズ - ダブルステートメント

2007

ブリーズ - ダブルステートメント/ 2007年/ 900×2700×2000mm / 旗、鉄、送風機

風のはじまり

風が、記憶や想像力につながるスイッチになることがあるようだ。吹き抜ける風が

不意に頬をなでる時、かつて見た風景や、その時の心情などが憶い出されることが

あるからだ。「蝶の羽ばたき効果」という言葉がある。ブラジルの蝶の羽ばたきが

メキシコ湾でのハリケーンの発生に影響をあたえるかもしれないというのだ。だとす

ると今頬をなでていった風も、いつしか僕に影響を与えるのかもしれない。その風

のはじまりは、流氷を超えて来たトナカイのいななきかもしれないし、カリブ海を

吹き抜けてきた蝶の羽ばたきかもしれない。あるいは風など吹いておらず、何気な

い記憶が脳の神経細胞と結合した僅かな震えを風と錯覚しただけかもしれない。

作品も誰かの頬をなでる風のようなものでれば、と思っている。もうしばらくその

「はじまり」と「ゆくえ」について考えてみたい。